唄収録日 :2015/7/16
唄記述日 :2015/7/17、8/26、9/29
*歌詞*
「土佐の訛りは 彼奴(あいつ)に此奴(こいつ)
お主(んし)ゃどうすりゃ 俺(お)りゃ帰る
件の事はどうすりゃや 居(お)るかや寝(いぬ)るか止めるかや
ナンチャ喧し黙っちょれ 黙っちょれるか止めとうせ
実(げ)にめっそう下らんにゃ
帰(い)んだらお母(なん)に云うちゃるぞ
多寡でたまるか やっちがない ヤー ヤー」
*記述*
タイトルの通り、土佐方言をふんだんに盛り込んだ唄です。
民謡は通常複数の歌詞がありますが、この唄は一番しかありませんので、唄っていてとても楽でした。郭で遊んだ男同士の言い訳喧嘩、という身も蓋もない内容ですが。(だからこそか、民謡歌手が唄っているのを聴かない気がします。習った通りに唄ったつもりですが、間違いがあったらすみません)
江戸時代末期に全国の花柳界で流行した「本調子甚句」が、土佐に入ってきてこういう唄に成りました(※1)。「本調子」は三味線の調弦法の一つで、「甚句」は7、7、7、5という歌詞の型を特徴とします。(この「土佐訛り」は字余りですが)この「本調子甚句」系統の曲は、聴いていて愉快な曲が多いです。
(※1)2015/8/26追記
参照先の『日本民謡大事典』によると、高知に明治4年には2つの遊郭が設けられ、料亭や劇場が新設され、天保の奢侈禁止令以来の芝居が行なわれ、浄瑠璃の興行も許されるようになりました。この唄はその時代背景を踏まえ、初めて遊びを知った人々の浮かれ騒ぐ雰囲気がよく出ていると思います。
(※2)2015/9/29追記
この曲と「宮津節」はどちらも本調子甚句なのですが、聴き比べると唄の出だしがそっくりです。京都から遠い高知まで唄が運ばれていったことが分かります。
*参照*
浅野健二 『日本民謡大事典』 1983 雄山閣出版